頭の中の洪水

言葉に頼っているうちなのでまだまだです。

好きな小説10選

 

はてなブログ10周年特別お題「好きな◯◯10選

 

 

本日もご訪問ありがとうございます!

 

音樂編の次は小説編です!

 

👇音楽編👇

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砂の女安部公房

この作品から安部公房さんを知りました。

めちゃくちゃ面白い。

砂の村で囚われたある男の心理的変化を描いている作品なのですが、この描写がとても巧い。

「えっ、えっ、ちょっと」と思ったり、苦い顔になったりするのですが、その続きが氣になってページを捲る手が止まりません。

この作品の次に『他人の顔』が発表されたそうですが、心理描写は『他人の顔』でも細かく捉え表現されていました。

 

あと単純にストーリーが面白い。

 

 

『魔王』伊坂幸太郎

当ブログに何度となく登場している作品ですね。

『モダンタイムス』も好きですが、「考えるくせ」をつけるきっかけになったという意味合いで『魔王』の方が好きです。

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『動物たちのまーまー』一条次郎

一言で言うと「困惑」です。

短編集なのですが、その一編ごと、一編の細部ごとに一条ismが詰まっています。

あまりの訳の分からなさに思わず本を閉じて、顔をしかめてしまいますが、その訳の分からなさを解消したいためにまた本を開いて読み進めます。結果、より分からない所に連れて行かれます。

しかし、そういった意味のわからないエンタメの中にも現代の諸問題を練りこみ、それが説教臭くならないというのは、作者の一条次郎さんが一流のエンターテイナーであるためでしょう。

 

2021年8月に文庫化された『ざんねんなスパイ』は、そういった「思わず顔をしかめてしまう一条ism」は少し鳴りを潜めているので、『まーまー』や『レプリカ〜』を読んだ時の様な困惑を求めている場合は、少し物足りなく感じると思います。

 

 

江戸川乱歩傑作選』江戸川乱歩

耽美と怪奇、恐怖と変態性の世界へわたしを突き落とした張本人。

感謝しています。

確か初めて作品に触れたのが中學生の時分で、どっぷりと浸かった記憶があります。

 

それまでも文明開化〜高度経済成長直前までくらいの時代背景の世界が好きだったのですが、その趣味が結実昇華したのが、江戸川乱歩さんの作品でした。

『芋虫』に描かれたサディズムの中にある羨望、『人間椅子』に書かれた「フィクションだけど、決してフィクションと一蹴できない」恐ろしさ・変態性、『屋根裏の散歩者』に描かれた完全犯罪とそれが原因となった破滅、など、この短編集の魅力は多岐に渡ります。また読もう。

 

個人的には、こちらに収録されていませんが『お勢登場』のラストがとても恐ろしくて戦慄を感じたのを覺えています。

 

こちらに収録されている『石榴』の"石榴表現"も、とんでもなく惨たらしい状況なのにもかからわず、とてつもなく美しく感じるのは不思議です。

そのグロテスクを美へと昇華させるのが、江戸川乱歩という人はとても上手なのです。

 

こちらの世界観もドンピシャで大好き。

 

 

『女王蜂』横溝正史

これまでの金田一作品はどうしても「男性性優位な視点」のものが多かったのですが、この『女王蜂』は女性性の視点が優位なものになっています。

そのためそれまでの作品とは一味違ったものになっています。

 

犬神家の一族』や『獄門島』の様な「日本的湿度を持った箱庭ミステリー」ではなく、土地を変えながら事件が起きることや異國風情が香るところなども、この作品の特筆点だと思います。

 

毎度の事ながら、目次の時点で『最終章 大団円』と、ある種の"ネタバレ"を筆者がかましているので、安心して読み進めることができます。

そしてその大団円が、本編で蠢いていた陰湿さの消え去った爽やかなものですので、いくら本編が陰湿で毒々しいものであっても、読後感が爽快なものへ変わり、すっきりと(ある意味)忘れることができます。

その爽快感を体験したくて、何度も読んでしまうのかもしれません。

 

特にこの『女王蜂』は、女性に焦点が当てられた作品でもあるため、大団円の爽快感も一味違っていて好きです。

 

悪魔の手毬唄』で描写されていた『滝壺と漏斗と枡』の様が、とても幻惑的で非常に美しさを感じたこともご紹介したいです。

この『むごたらしささえも美と表現する』というのは江戸川乱歩さんでも言及しましたが、その技巧は推理小説家の妙なのか?

わたしは退廃の美が好きなのか?

 

 

 

オリエント急行の殺人』アガサ・クリスティ

推理小説の大傑作。

大掛かりなトリックや「そんなんわかるかいな」というようなトリックは一切無く、名探偵ポアロが乗客の挙動や言動から真相を導き出すという作品です。

『実はこんな秘密がありました』といった種もなくて、むしろ冒頭からヒントが散りばめられているので、健康的に「うわ〜!やられた〜!」となることができます。

 

『不朽の名作たる所以』を存分に感じる作品ですので、未読の方はぜひ一度お読み下さい。

 

終盤で明かされる「意外な人」は見抜ける人少ないんじゃないかしら。

ともすれば、その「意外な人」は『そんなんわかるかいな』の部類なのかもしれませんけど、それも事前にネタ振りをしていますし、密室殺人の直接的な要因にはならないので、"氣になって腑に落ちない"なんてことはありません。

読み返しても樂しめる作品だと思います!

 

 

『幻の女』ウィリアム・アイリッシュ

THE ミステリ小説。

作品の様な雰囲氣や時代背景が大好きなので、ツボど真ん中タコでした。

物語は湿った不氣味さがうっすらと漂っているのに、どこか乾きも感じるという不思議なものだったと記憶しています。

 

主人公が冤罪で死刑と判決され、刑の執行直前に主人公の友人女性が無実を証明するために単独で捜査をするのですが、駅での描写は非常にはらはらとするサスペンスフルなものだったことも印象に深いです。

主人公のアリバイを確かめるために、バンドに聞き込みをするシーンも、非常に「煙たさの表現」が巧く、印象深く覺えています。

 

 

動物農場ジョージ・オーウェル

ロシア帝国で起きた革命を下敷きに描かれた寓話。

 

2020年の決算ブログでも書きましたが、"恐ろしい"です。

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スノーボールと共に革命を指揮したナポレオンが、いかにして『怪物』に変貌したかの変遷は、過去の事・小説の中であろうと強烈な恐怖を感じます。

ほとんどホラー作品。

好きな作品に違いはないのですが、再読するということは「恐怖体験を再度体験すること」と半ば変わらないように感じるので、二の足を踏んでしまいます。

すげー怖いんだもん。

 

 

『月と六ペンス』サマセット・モーム

証券マンを辞めて絵描きになった人間を、その友人という一人称視点から描いた作品です。

ゴーギャンをモデルにして書いたそうですね。

 

この絵描きになった人間の名をチャールズ・ストリックランドというのですが、この男がなかなかのクソ野郎。

ですが、藝術家に常識を求め説いてはいけないという戒めを描いた作品としては、これ以上のものはないのではないでしょうか。

 

逆を言えば『世俗の常識から逸脱し、世俗に縛られていないから、神とでも言える世界と繋がることができた』ということです。

 

この作品の全て、ストリックランドの話すことの多くが自分と重なるため、好きで大事な作品となっています。

 

自分のことのように感じられすぎるために、わたしはこの作品が好きなのかも?

ストリックランドほどの(無形有形関係のない)真の愛に飛び込める勇氣と狂氣をわたしが持てているのかはわかりませんけれどね。

 

 

 世界でもっとも貴重なものである美が、散歩の途中でふと拾う浜辺の石ころと同じようなものだと思うかい?

 美とは芸術家が世界の混沌から魂を傷だらけにして作り出す素晴らしいなにか、常人がみたこともないなにかなんだ。

 それもそうして生み出された美は万人にわかるものじゃない。美を理解するには、芸術家と同じように魂を傷つけ、世界の混沌をみつめなくてはならない。

 たとえるなら、美とは芸術家が鑑賞者たちに聴かせる歌のようなものだ。その歌を心で聴くには、知識と感受性を想像力がなくてはならない。

 

月と六ペンス - 120p

というセリフは「その通り」すぎて、涙が出てしまいます。

 

余談ですが、訳者の金原瑞人さんの文章がとても読みやすいので、読まれる際はぜひ金原訳版をおすすめします。

 

 

『香水』パトリック・ジュースキント

香水の調合師に買われた孤児の青年が、理想の香水を求めて殺人を重ねていく物語。

 

鼻が異常に効くために、旬の過ぎた落ち目の香水商に弟子として買われた主人公は、新しい香水の開発の代価として香りを閉じ込める方法を教わります。

ある時、青年は生娘の肉体から放たれる芳香こそが至上の香りだと考え、生娘の芳香を『劣化しない香水へ変え保存しておきたい』という理想を実現するために殺人を重ねていく、という物語です。

 

集めた生娘の香水を実際に使用するシーンがあるのですが、その用途は思いつかなかったことなのにも関わらず、非常に納得のいくものだったことが強烈に記憶に残っています。

 

映画化もしており、どう見ても変態映画なのですが、その変態性が芸術性へ昇華しているために自然と観ることができます。

この変態性が、「映像美」や「音響の美」を求めた先の変態性だったことも理由でしょうね。

 

どうしても映像化すると原作からカットされる箇所が出てしまいますので、映画だけでなく原作も読んでほしいと思います。

主人公の青年がとある洞窟で絶望するシーンがあるのですが、そこの描写が特に強く記憶に残っています。

 

「麝香(じゃこう)」や「薄荷(はっか)」などの、香油になる植物の名前はくまなく漢字で表記されているので、漢字辞典を小脇に抱えて読まれることをおすすめします。

 

 

 

まとめ

小説って、本当に良いものですね!

全体リストを見れば共通点が見つかるかなぁと思っていたけど、あんまり分からないなぁ。

耽美と藝術と心理描写?

あと畏怖?

 

 

今現在読んでいるのは、ウラジミール・ソローキンというロシアの作家さんが書かれた『テルリア』という作品です。

面白いですが、どうとも言えない作品ですね。まだ半分も読んでいないのでわからないのも当然かもしれません。

 

 

 

ありがとうございました( ¨̮ )