頭の中の洪水

観察と思考と分析の日記ですよってね。たまに思想家が顔出します。よってね。

伊坂幸太郎作品発表順に読み返しシリーズ中間報告

 

本日もご訪問ありがとうございます。

 

2025年もいよいよ年の瀬。

わたしはこの一年を伊坂幸太郎さんの作品読み返しに注いでいました(とはいえ、あくまで幽流〜苦)。

 

2025年の年の瀬時点で四十作品以上あることに戰々恐々としながら、現時点で再読した作品の感想を乗せて参ります。

 

 

1 オーデュボンの祈り

かなり昔(十数年前)に初読した以来、恐らく再読をしなかった作品。ですが、読んだ時期の影響からかおおよその内容は覚えていました。これは作品のトリック?や結末が鮮やかだったからなのですかね。

また「島の外からやってくる人が島に無いものを持ってくる」という言い伝えについて、主人公ではない人が持ってくるというのも面白味を感じました。

そして、読み返していて苦笑してしまったのですが、わたし自身の価値観や価値基準にめちゃくちゃ影響を与えていました。

これは人格形成の時分に読んだからなのでしょうか。

floodinhead.hatenablog.com

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2 ラッシュライフ

登場人物四人の一日がリレーされるお話。ですが、伊坂マジックが効いていて翻弄されます。

最後に読んだのはきっと十年以上は前であるのに、内容を六割方覚えていた。

そのため少しばかり退屈を覚えてしまったのですが、これこそ優午が言っていた「未来がわかるのはつまらない」なのだなと気づき、苦笑してしまいました。

前作とは違いドライな印象を覚えた作品でしたが、やはり語り手が当事者視点なのか神視点なのかで雰囲気は変わるのですね。

果たして神は退屈なのでしょうか。

 

前作と同じようにカオス理論を言及していたり、その後に発表される作品の題材なども織り込まれていたりと、著者の描きたいところは変わっていないのだなと思いました。

『悪人には鉄槌を』が著者の姿勢ですが、今作の悪役である戸田がここまで悪辣ない人間だとは忘れていました。

 

 

3 陽気なギャングが地球を回す

とてもエンタメに振った作品です。そして非常に映像的。

終盤で「ギャング映画は些か時代遅れ」と触れられていましたが「しかし撮り方次第」とも言っていたので、作者が愛するギャング作品の復興を願って?の作品なのかなと感じます。

ほとんど覚えていない、と思っていたのですがシリーズ最新作が文庫化された時に読み返しており、細かい部分はさておき大まかには覚えていました。

とはいえ、楽しんで読めました。久しぶりに伊坂の伏線にしてやられたのでよかった。

 

 

4 重力ピエロ

身近な作品だな、と感じました。

それもそのはず、物語の軸を走っている題材‪もその理由ですが、著者自身が明言している『作品に一つの非現実要素を入れる』が当作品には含まれていないからです。

また泉水の視点で物語が展開していくのも理由の一つでしょう。

しかし今作の悪役は伊坂作品の中でも最も身近で、受け入れ難い悪役ですね。

その後発表された作品で言及されたことも描かれていました。

あと黒澤はファンの間でも人気ですが、『重力ピエロ』にて登場したことによって、ぐっとその人気が上がったのではないかと感じました。

 

 

あとその後発表された作品で言及されたことも描かれていました。

泉水が葛城に対して思った「理屈にならない理屈で言い負かして得意になってきたのだろう」は『論破をしたって論破した当人が気持ちいいだけで周りの人間は白けるだけだ』ですし、春が話していた「 "なぜ人を殺してはいけないのか" を大人を困らせるために質問する生意気な高校生」は王子ですねしね。

 

あとあと、これまで何も思わなかったけど伊坂特有の文章の癖ってあるじゃないですか。

これまでは何も思わなかったのですが、重力ピエロにはなんだか臭さを覚えました。この臭さが「気取っている」との感想を生むのかな、と思いました。

わたし自身ちょっと拒否感を覚えてしまいました。

 

 

5 アヒルと鴨のコインロッカー

その題材によって初読以来再読をしなかった作品。

なんだか「伊坂っぽいけど伊坂っぽくないと感じる作品」でありながらも、『これまでの作品を踏襲しながらその後の作品への架け橋となる作品』であるとも感じました。

「伊坂っぽくない」と感じたのは超能力的な要素が描かれていなかったからなのでしょうか。

あと伊坂幸太郎という人は、大々的に人が死なないミステリを書きたい人なのか?とも思います。

 

 

6 チルドレン

収録作全てに登場の陣内。初読時はその自由さにどこか憧れたような感慨もありましたが、年をとって再読してみればなんとも苦笑いするしかないように人物に思える。しかしそのあっけらかんとした姿にどこか爽やかさを感じるのもまた事実。その様が少年少女に慕われるのだろうし、犬の方が近いとも言われる所以か。

ところで最終編の『イン』はこれ傑作じゃないか?永瀬を語り手とすることで純文学的な表現も光るし、何より目が見えないという個性によって我々読者と同じ立場で物語を体験することができる。

あと短編集ではあるも、各短編の要素がリンクするために「他の短編も気になってくる」という雑誌掲載を見越したマーケティングも巧い。

 

 

7 グラスホッパー

伊坂幸太郎ノワール作品である印象でした。伊坂作品には非人道的な悪役が登場しますが、その中でもトップクラスに物騒な作品です。

裏社会的な題材を主軸として扱った初めての作品であり、後に発表される社会の暗部や物騒な世界を描いた作品たちへの橋渡しとなるきっかけの一作であるとも感じます。

確か一番最初に触れた伊坂作品だったために個人的な思い入れも深い作品であり、しじみの砂抜きの場面は初読時から印象的なところで、とても好きな場面です。

 

 

8 死神の精度

傑作の一つであると思いました。

死神を語り手とすることで、伊坂作品が持っている世の中を斜に構えて観る要素が違和感なく収まっているように感じます。

しかし死神という我々が感知できない存在が主人公になっているからといって全てお見通しなのではなく、人間的な比喩に疑問を持ったり物語のミステリ的な部分に困惑をしたりするので人間である読み手にも親近感を与えます。語り手がファンから人気なのも納得できますね。

後半三編が特に好みで『旅路を死神』は人間が陥りがちなすれ違いや早とちりから起きた勘違いや悲劇を、旅行という時間で治療が表現されており巧いと感じました。

最終編は語り手が翻弄される様子が他の短編より多く、そのために『死神対老女』となっているのかとか思いますが、作品の集大成的な内容なのがとても良かったです。

ところで『チルドレン』の陣内然り思春期に伊坂作品を多く読んだからわたしは格好いい大人に憧れをのだなと思いました。

格好のいい大人=少女性や少年性を忘れない人

 

 

 

9 魔王

《影響力》というものを強く有している作品だと感じます。

伊坂作品では『モダンタイムス』が一番好きで最も影響を受けた作品だと思っていましたが、もしかしたらこちらの方が性格などへ多大な影響を与えていたのかもしれません。

確かに初読時の中学生くらいから物事を難しく考える考察魔になったと感じます。

この「読んでしまったら元に戻れない」という感覚は、喩えるならば『衣服に付いた汚れを綺麗に落としたとしても、汚れが付いたという事実は消えない』みたいなところかも知れません。

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10 砂漠

講談社っぽい作品だなと思いましたし、それでいて新潮社の伊坂っぽい作品だとも思いました。

実は西嶋は『チルドレン』で登場していましたし、西嶋の信条である「ばかばかしいことでも信じて続ければ変わる」は『魔王』で安藤が主張していたことです。

『チルドレン』の陣内は「そもそも大人がかっこよかったら子どもはグレない」を体現しているかっこいい大人ですし、西嶋は陣内の意思を継いでいます。

きっと西嶋も陣内のようなかっこいい大人になるのでしょう。

ですが友人としては陣内よりも西嶋の方が厄介だろうなとは感じます笑

読後感からしても良い作品だなと思いました。

 

 

11 終末のフール

初読は確か12,3年前。その当時はどうにも退屈だったような気がいたしますが、この度読み返してみればなかなかどうしてこれが面白かった。

退屈に感じたからなのか、ほぼ初読時のように愉しめました。

もしかしたら結構好きな部類に入る作品かもしれない。

伊坂さんの作品は作者曰く「一つくらいの嘘はいい」という意識で書かれているそうですが、その "嘘" が『小惑星が堕ちる』ということではなく『小惑星が堕ちるとしてももっと何十年も前だ』ということだとは思いませんでした。

また表題作が「愚か者の終わり」ではなく「愚かさの終わり」というところを指しているところも良かったです。

あとこの作品は短編集ですが、どこか'20年頃に流行った病的にも、個々人が内包する様々な感情に対しての精神的治療的にも感じました。

あと『たとえ荒廃した世界であってもお金を払う』という描写がありますが、規則というのは時に自身の正常性を確かめる指標にもなり得るのだなと思いました。

 

 

 

12 陽気なギャングの日常と襲撃

非常に伊坂幸太郎らしい作品だと感じました。しかしながら作中でも言及されている通り「少しくどい」と感じる部分は確かにあり、"以来されて書いた商業作品" という印象を覚えました。

エンタメという意味でも一作目の方が優秀かなぁと思う。

あとこの作品は祥子さんを好きになる作品。

ところで『世界を動かしているのは、法律じゃなく、印象』という部分であったり、伊坂幸太郎作品は結構芯を食ったことを書いていると感じます。

 

13 フィッシュストーリー

十年以上前の過去に読んで以来、再読の機会が無かった作品。
その理由は『あまり面白みを感じなかった』からなのですが、この度読み返してみればなかなかどうして面白かった。
それはわたし自身が幼かったのもあるのでしょう。
後の作品で根幹となる考え方についての言及があったりして、ファンとしては大変楽しめました。

 

 

 

そのほか別の作者さんの作品‪も読みながらとはいえ、遅読すぎる。

ですがそれもわたし‪( ¨̮ )‬

 

本日伊予の國に帰省なのですが、今日明日で『フィッシュストーリー』を読み終えることができたらいいなと思います。

→できました‪( ¨̮ )‬

 

 

ありがとうございました‪( ¨̮ )‬