頭の中の洪水

言葉に頼っているうちなのでまだまだです。

自然の世界で、死に善悪はない

 

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豊かな作品

『ザリガニの鳴くところ』という映画を観ました。


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ある日、村の外れにある火の見櫓の麓で青年が絶命をしているところを発見され、近くにある湿地に一人で住む女性に殺人の容疑がかけられる。

その女性は本当に青年を殺したのか、事件ではなく事故なのか。

 

というところが鍵になってくるミステリー作品です。

 

 

個人的にはそんなに期待していなかったのですが、ミステリー小説が原作ということで「まぁ観てみるか〜」くらいの氣持ちで観に行ったのですが、とても良かったです。

 

何が良かったかというと、その豊かさです。

湿地に住む動植物や水などの自然が溢れており、その自然が教師となって主人公のキャロラインは世界を知っていくのですが、その環境、それがとてもとても豊かだな、と感じた次第です。

 

主人公のキャロラインは12歳の頃から一人暮らしとなるのですが、それまでには家族も居り、彼女の母親は湿地を絵画に納めたりしておりましたしね。

 

 

嫉妬からくるもの

この作品は差別的な要素が出てきますが、それは物語の舞台となった時代である1969年というのが重要な意味を持っていると感じます。

 

もちろん、その時代は黒人差別などもあったという史実があるので、そこも要素の一つとしてあるとは思うのですが、その時代背景と、キャロライン自身が自然として生きていたことも関係していると考えています。

 

1969年といえば、アメリカという國が世界の警察的な役割を発揮する時代の、前夜的な位置にあると感じております。

 

つまり、都市としての急速な発展を遂げる直前とも言えるような時代なわけです。

 

そんな時代の大きな流れとして、都市化・発展していく世界にあるなか、湿地に住むキャロラインはもっと大きな『自然という流れ』に則して生きていたわけです。

 

町に住んでいた住人のほとんどが、そんなキャロラインに対して根源的な嫉妬を感じていたのではないでしょうか。

 

 

町に住む自分は『時代の流れ』という、ある種、〈流行と同義のもの〉に頼って生きているが、湿地の女性は自然というある意味絶対の存在と同調して生きている。

 

自然とは地球のことであり、地球とは生も死も受け入れる。さながら神と同義の存在である。

そんな神とも形容できる女性を畏れたから、その畏れが嫉妬となり、差別に変化したのではないかと感じました。

『時代』や『流行』なんてものは、特定の個人が意思を持って作り出すものでもありますしね。

 

イソップ童話に『酸っぱい葡萄』という寓話がございますが、理解できないから差別をして迫害をしよう、という思考回路なのかな?無意識のものが原因ではあるのだろうけど、そういった背景があるのではないか?と思った次第です。

 

 

自然という流動する絶対

わたしは、キャロラインの生き方はとても美しく、素晴らしいと思います。

 

 

あと死んでいた青年のチェイスは生理的に嫌悪する性格をしているので、あの結果は、さもありなん。然るべし。と個人的には思います。

 

 

また、劇中でキャロラインが発言していた『自然の世界に、死に対して善悪などないのだろう』という台詞にはっとしました。

 

全くその通りだと思います。善悪などというものはヒトが勝手に相対性を用いて貼り付けたレッテルですからね。

 

自然という神の流れの中では、生も死も必要なサイクルの一つですから。

 

 

犬と神

ジャンピンのご夫妻がいてくれて良かった。

 

ジャンピンのおやっさんは、妻のメイベルから言われた聖書の一節(「小さきものに手を差し伸べるということは、自分を助けるということと同義である」という「情けは人の為ならず」ような意味合いの一節)からキャロラインを見守ることを決意しますが、作品の舞台になったアメリカ南部にあるノースカロライナという土地も関係しているのでしょうね。

 

聞くところによると、アメリカという國は北部よりも南部の方がキリスト教に対しての信仰が深いそうです。

なので、あんまり南部で「Oh, my god」と言わない方が良いそうです。

 

 

そういえばキャロラインが初めて學校に行った際に、犬(DOG)のスペルを「G・O・D」と言って嗤われる、というシーンがありましたが、人よりも犬の皆様の方が自然として生きているのだから、キャロラインとしては犬は神としても認識していたのではないか?と思いました。

 

 

良い映画だった。作品の力もあるけど、映画として重厚でした。

惜しむらくは、Dolby ATMOSなどの良い音響で観たかったことですね。。

 

 

 

ありがとうございました( ¨̮ )

 


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