頭の中の洪水

言葉に頼っているうちなのでまだまだです。

【映画】新聞記者

 

本日も閲覧ありがとうございます。

 

 

新聞記者』という映画を見ました。

 

f:id:maro19930624:20210524170110j:plain

https://shimbunkisha.jp/

 

youtu.be

 

公開当時から氣になってはいたのですが、観る機会が無くなり、今回ストリーミングサービスにて鑑賞するに至りました。

この記事では、映画『新聞記者』のことを取り上げます。

 

 

毎度のことですが、ネタバレが含まれます(新聞記者、モダンタイムス、スノーピアサー)。

 

 

 

 

 

 

 

公開当時(特報を観た時)は「すげえ作品が公開されるんだな!」と感じました。

大手映画会社の作品でもなく、内容が内容なだけにメディアでもほとんど取り上げられなかったようです。納得だとも言えます。政府に睨まれたくないもんね。

 

 

さて、「内閣情報調査室(内調)」という政府機関が『薄暗い褪せた質感の画面・映像作り』をしていて、そこや政府に切り込む東都新聞のオフィスが『明るく』作られているところや、内調のオフィスには窓が無いが新聞社のオフィスには窓があるところ。

 

新聞社側の主人公である吉岡(シム・ウンギョンさん)だけが赤いカーディガンを着て、他の登場人物から目立つように演出していたところなど、そういった演出等については誰でも見りゃわかるところですし、ちょっとくどい。

ひいてはそれでノイズになりかねないとも思いました。

 

それに『政府は暗い部分が多く、報道(原作者は望月衣塑子さんというジャーナリストさんらしいです)はその暗いものにメスを入れる者だ』という、それ自体は立派だけどその理念を正当化するためにちょっと誇張していない?と感じる部分も多かったです。

 

Twitter上で受けた誹謗中傷がいまだ許せないし、茶飯的に起こっていることだと知ってほしかったのもあると思いますので、その氣持ちもわからないではないですけどね。

 

 

ですが、個人的にはそんなことはどうでもよくて、非常に『モダンタイムス』っぽいなと感じました。こいついつも伊坂の話してんな。

f:id:maro19930624:20201126165407p:plain

https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000184852

 

 

この『新聞記者』という作品は実際に起きた事件や出来事がいくつか下敷きとなっていますが、その内の一つの『伊藤詩織さんの事件』を元にした事件が物語の冒頭で起こります。

 

後藤さゆり(民間人)が総理お抱えの記者にレイプをされ告発するが、逮捕が見送りにされる。

 

その民間人は野党が画策し送り込んだハニートラップだった。

そういった「事実を作れ」と、内調の官僚である杉原(松坂桃李さん)が上司の多田(田中哲司さん)から指示をされます。

一度は「民間人だから関係ないでしょう」と反論する杉原でしたが、「野党と繋がっている事実さえ作れば良い。これも国を守る大事な仕事だ」と説得され、この指示を飲みます。

 

この後に杉原及びその同僚が、内調のオフィスでTwitterを使って(一人あたり5アカウントくらい?)、その民間人の印象操作・情報操作をする様子が描かれます。

正直、そんな簡単な話か?単純な話か?とは思いますが、そんなことをしているのかもしれません。

 

実際はそんな末端作業はランサーズみたいなアルバイトを雇ってやってるでしょとも思うし、そういった印象操作は野党もしているとも思います。

 

 

ユダヤ人をガス室で大量虐殺していたナチスのアドルフ・アイヒマンは『仕事だ』と割り切って、毒ガス噴射のボタンを押していたとのことですし、「どんなにひどいことも、仕事として細分化すれば罪悪感はなくなる」と『モダンタイムス』でも描かれています。

 

 

その後、「内調が『後藤さゆりと野党が繋がっている』と印象操作をするためにチャート図を作成し、拡散している」と週刊誌にすっぱ抜かれます。

 

それに対し、多田は「後藤さゆりと野党と繋がっているという情報を、与党ネットサポーターへ拡散しろ」と内調の官僚へ指示を出します。

その指示に「嘘をでっち上げるのか」と杉原は異議を唱えますが「嘘か本当かを決めるのはお前じゃない。国民だ」と多田が言い返します。

 

有名な話ですが、嘘の中に本当のことを2割入れるそうですね。逆もしかり。

どちらにせよ、本当っぽい嘘さえあれば大衆は扇動される。センセーションであればあるだけ、揺れも大きくなり、情報を受け取るしかない大衆はその情報に追随するしかなくなる。大衆はあほですからね。

 

見る角度によって事実にもフェイクにも妄想にもなりえる。

モダンタイムス内で井坂好太郎が書いていた『苺畑さようなら』です。

 

 

この『新聞記者』も組織やシステムの話だと受け取りました。

國というシステムを存続させるために、官僚という働きアリがせっせとシステムを回している。

『モダンタイムス』でも「アリは賢くないが、アリのコロニーは賢い」という言葉が出てきます。

杉原も多田も、都築も國家という『システム』の運用を停止させないために働いている。

だから、だれか特定の一人を罰したり追放したとて、とてつもない大きさの機械の部品が一つ壊れた程度なのでしょう。

替えの部品は『名もない個人っぽい誰か』を引っぱってきて、それっぽい役割を与えたら良い。

チャップリンの『モダンタイムス』もチャップリンが部品の一つになる話らしいですね。

 

國の首相が変わったとて、その首相を運用する人が一緒ならシステムは一緒。

とても単純に例えるなら、安倍さんだったものが菅さんになろうが麻生さんになろうが、自民党が与党であるかぎり一緒。みたいな。

有名無力、無名有力です。

 

 

 

この物語が転がるきっかけとして「新設大学計画の情報リーク」がありますが、その大學新設は首相絡みだと、神野(杉原の昔の先輩)から杉原に宛てられた手紙で明かされます。

 

新設大學を運営する民間企業は首相の古くからの友人の会社で、そこに多くの税金が流れた結果だった。

 

 

「ひとりひとりは良い人たちだけれど、集団になると頭のない怪物だ」というチャールズ・チャップリンの言葉がありますが、その言葉を思い出しました。

(『モダンタイムス』で使われていたと思っていたけど、実際は『PK』だったみたいですね。勘違いをしていました。)

 

f:id:maro19930624:20210524170521p:plain

https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000206676

 

本作の謎の一つとなる新設大學を作るきっかけも首相ですし、内調が庇っていた國、その國の顔となる首相が一切登場しない部分も、集団になった頭のない怪物感がありますね。

國の顔になるのはあくまで役者としてだけなんでしょうけどね。

 

杉原も多田も神野も都築も、登場しない首相も國というシステムを存続させる部品でしょう。

 

 

作品の最後で多田が「この国の民主主義は形だけでいいんだ」と言ったのも印象的でした。

『民主主義っぽいもの』さえ投げておけば、大衆が勝手に肉付けをして満足してくれますからね。

 

 

 

まぁ戯言として受け取っていただければ( ¨̮ )

 

 

 

 

 

『パラサイト 半地下の家族』を監督したポン・ジュノさんの『スノーピアサー』という映画も観たのですが、そちらはジョージ・オーウェル著の『一九八四年』っぽいなと感じました。

「子供は安定供給される」という台詞や含まれていた意味も、リンク性があるように思いますね。

『子ども』ではなく『子供』と字幕表記されていたのも、日本語表記として上手いなと思いました。

 

 

floodinhead.hatenablog.com

  

floodinhead.hatenablog.com

 

 

 

余談ですが、『新聞記者』のレビュー動画をYouTubeで何本か見たのですが、動画のコメントが軒並み右だ左だ反日だパヨクだネトウヨと汚い言葉の乱立でした。

それがきっかけでインターネットとも本氣で距離を取ったほうが良いなと強く感じましたね。

Twitterもゴミ溜めになって久しく、そことは距離を取ってはいますが、インターネット全体で距離を取って接していった方が良いのかも。

それをインターネット上のブログに書いているわけですけどね。

 

 

ありがとうございました( ¨̮ )