本日も閲覧ありがとうございます。
今回は過去にも何度か書いてきた伊坂幸太郎著の『モダンタイムス』について書いていきます。
↓↓以下、ネタバレになります↓↓
播磨崎中學校
システムエンジニアをしている主人公の渡辺拓海が、先輩社員の失踪をきっかけに、その人物が担当していた仕事を請け負うことになります。
その仕事は出会い系サイトの仕様変更というものであったが、不明な点や不可解な点も多かった。
その仕事に疑問を感じながらも、作業をこなしていると、プロジェクトメンバーが次々と危険や不幸に見舞われます。
彼らは皆、ある特定のキーワードを検索していた。
というのが、『モダンタイムス』のあらすじになります。
「ある特定のキーワード」というのが、『播磨崎中學校』『個別カウンセリング』『安藤商会』
それらのキーワードを合わせて検索している人物を、逆に調べている様子だった。
播磨崎中學校というのは、五年前に凄惨な事件が発生した新設の中學校です。
播磨崎中學校は新設の私立中學校で、新設のため全校生徒は全て一年生。クラスも二つのみで校舎の大半が未使用であった。
「個性を伸ばし、各生徒の得意科目に重点を置く」という方針のもと作られた學校であったため、校風は自由。校則は緩く、學生服の着用も強制ではなかった。
制服が決まっていないため、わざとふざけた格好で登校する者もいた。
そのため、保護者参観に覆面姿で武装した人が来ても、誰かがふざけているのだろうと思っていた。
武装集団は職員室と、二クラスを占拠した。
一クラスが惨殺されたタイミングで、当時その學校で用務員をしていた永島丈が現れて、武装集団を制圧し、事件は解決をした。
以上が事件の概要で、その事件がきっかけで國民的なヒーローになった永島丈は政治家としての活動を始めます。
ちょうど「ある特定のキーワード」を見つけたタイミングで、その事件を扱ったドキュメンタリー映画が公開されており、主人公を含めた数人でその映画を観に行きます。
その映画では、上記のような事件の概要。
当時、その學校に通っていた者や職員をしていた関係者のインタビュー。
そしてその事件があった場所の取材が描かれており、事件後すぐに學校関係者の希望で校舎は取り壊され更地になっていました。
『播磨崎中學校事件』の不可解な点、そしてその事件を検索している人物を逆に調べているのは何故か、そういったシステムを持ったサイトを作った「株式会社ゴッシュ」というのはどういった会社なのか。
それを確かめるために主人公の渡辺拓海は、失踪した先輩社員ほか三人と共に事件の真相を知る永島丈を突撃します。
事件の真相
「事件の真相を教えやがれ。あの事件はでたらめだ」と詰められた永島丈は口を開きます。
「そうだ、あの事件はでたらめだ。俺は英雄として作り上げられたんだ」
永島丈が話す真相は以下でした。
播磨崎中學校は全寮制で、生徒たちは基本的に自宅へ帰れず、かなり厳しい管理教育が徹底されていた。
過去に行った教育の功罪を鑑みて、どういったやり方が効果的なのかを検討する必要があった。
その研究をするために作られたのが、「播磨崎中學校」という管理された環境だった。
徹底されたマニュアル・動物心理を用いた環境が作られ、その空間内に生徒は置かれた。
『厳しい教育方針ながら普通の學校』だと保護者たちは認識していたが、その管理方針に疑問を持った保護者たちが學校に来た。
アポイントメント無しで急にやってきた保護者に學校側は驚いたが、追い返すわけにはいかない。別室を用意し、子ども達と面会させることにした。
そのときに、二つのことが重なった。一つは「ある保護者がなかなか生徒に会えなかった」もう一つは「その保護者が銃を所持していた」
その保護者は學校側から「息子さんは体調不良のため寮で休んでいる。後ほど車で寮まで連れて行くので、そこで会ってくれ」と言われた。
その親は、他の保護者が子どもたちと面会しているのを横目に、校内を徘徊した。そのときに見つけた教室に飛び込むと、そこには我が子がいた。あるカウンセリングをしているところだった。
『個別カウンセリング』と呼ばれたそれは、恐怖によって指導教育をする方法であった。
苦痛に歪む我が子の顔を見て取り乱した保護者は取り乱し、カウンセリングを担当していた教諭に襲いかかった。
その時に落ちた銃が、担当教諭の手に渡り、教師は興奮に任せ、発砲した。
その銃弾は、子どもを庇った保護者の胸に当たった。
その様を見ていた生徒は、激昂し、教師から銃を奪い取り、教師の眉間を打った。
そのあと、しっちゃかめっちゃかあって、用務員をしていた永島丈が教室に着いた時には死屍累々の状況となっていました。
「それが真相だ」と永島丈が言います。
どこからともなく警察と役人が押し寄せ、現場検証が行われた。
そんな事件がどうして様相の全く違う事件になったのか、については「そういう事件だと決めたから」と永島丈は説明します。
『播磨崎中學校は試験的な教育機関で、國が正式に進めていた政策の一環だった。表に出すわけにはいかない』からだそうです。
その結果、永島丈は英雄に仕立てられた。
しかし、人の口に戸は立てられない。
どうやって口封じをしたのか。
「真相を話そうとしたら、何らかの悪いことが起きる」と言って、『約束を守らなかったら酷い目に遭うことを強調』した。
その強調方法が「検索」で、『真相に関係する言葉』を検索した人間を見せしめにする。
それによって、事件の関係者に箝口令を強いた。
それでも我慢ができずに検索をした場合は、警告書が届く。
『約束を守るように』
そうして、「監視しているぞ」と念を押す。
それらの説明を聴き、共に来ていた他の者は満足をしました。
主人公は、永島丈に会うまでに起きた出来事や話したこと、観た映画を思い出して、口を開きます。
「永島さん、今の真相はチェンジです。氣に入りません」
「真打ちを出してください」
一緒に永島丈を突撃した同僚が困惑する声を上げる中、主人公の渡辺拓海は説明をします。
「人は一度、説明を受けるとそれをありがたい真実だと受け入れるところがあります。その後ろ側に、本当の真実が隠れている事に氣付かないものなのです。永島さんの話した真実は『説明用の真実』ではないか、そう思ったのです」
さぁ、本当の真実まで書くと読む時に面白くなくなりますので、書きません。
これだけネタバレしておいてどの口が言うのだ、という感じですが( ¨̮ )
ここまで沢山のネタバレをして書いてきましたが、この『モダンタイムス』という"作品の面白さ"は、もっと別の所にあります。
本当の面白さは要約できませんからね。
軽減税率
令和一年(2019年)十月一日に消費税率が8%から10%に引き上げられ、軽減税率も同時に導入されました。
そのタイミングで『増税を指揮した官僚の人間は賢い』という内容のツイートを拝見しました。
「どういう真意だろう?」と思ってツイートの続きを見ると、その発言の意図は以下のものでした。
増税をするのと同じタイミングで軽減税率が実施された。
これまでならば「増税の必要性」を議論していたが、軽減税率という「ややこしくて面倒臭いシステム」を導入することにより、軽減税率ばかりに頭がもっていかれ、議論が軽減税率についてのものばかりになる。
軽減税率に頭をとられ、増税の是非や必要性が議論されなかった。
これにより、増税は「ありきのもの」と消費者に刷り込むことができた。
ありがとうございました( ¨̮ )
勇氣はあるか?